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みやこぶっく「文学カフェ~人間失格~」イベントレポート

※転載元:ナポリタン

太宰治といえばみなさんはどんな作品を思い浮かべるでしょうか。『走れメロス』『津軽』『お伽草子』『斜陽』『人間失格』などが有名です。1月17日、上京区出町にある都市と田舎のシェアスペース「Deまち」では太宰治作品の中でも触れたことのある人が多いであろう『人間失格』をテーマに、参加者それぞれが本を持ち寄ってトークをする文学カフェを「みやこぶっく」が開催しました。

同イベントは、京阪神で本の魅力や楽しみを伝える活動をしている「みやこぶっく 井上歩夢」が定期開催しているイベントの第3回目です。今回は、京都大学、大谷大学、龍谷大学から4名の文学好き学生が集まり、お酒やご飯を片手に“人間とは”というデカダンなトークが繰り広げられました。
(デカダン…退廃的な生活をする人。また、退廃的。)

太宰治とは

「太宰治の『人間失格』を読んだことはありますか。この作品は太宰の人生を振り返るように書かれている。個人的な人生体験なのに、多くの人間が『これは自分の物語だ」と共感できるような文体で、体験・経験の普遍化がなされている。今日は太宰や本を通じて、人間について考えていければと考えています』

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冒頭、井上氏からこのような切り出しがあり、太宰治がどのような作家であったのかが説明されました。

井上 太宰はたくさんの名言を残しています。
「世間というのは、君でしょう」
(『人間失格』より。堕落していく太宰に対して、「そんなこと世間様がゆるさないよ」といった友人に返した言葉)
「嫉妬、それがお前の、愛されたいと念じたあげくの収穫だ」
「他の生き物には絶対なくて、人間だけにあるもの。それはね、ひめごと、というものよ」(『斜陽』より)
これらの言葉は自分も含めてたくさんの人の心に刺さりました。

また、太宰は幾人もの女性と心中を図りましたがいずれも自分だけが助かり、また別の女性と恋愛を始めるといういわゆるモテ作家であったといいます。モテる作家の各文章はどこか特徴があり、作家の顔からどのような展開や結末になるかを予想することができるとか。近現代文学の作家では、モテる作家は太宰治や志賀直哉、芥川龍之介、萩原朔太郎。モテない作家は武者小路実篤や梶井基次郎などがあげられます。

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お酒、食べ物、お菓子などを食べながら和やかな雰囲気で話は弾む。

参加者に合う本の選書を

井上 みなさんはどんな本を読みますか?
参加者A:大河ドラマも始まったし、関連して司馬遼太郎の『世に棲む日々』を読んでいます。
参加者2:僕は伝奇小説が好です。よく読むのは山田風太郎の『甲賀忍法帖』。初めて読んだときは、SFではなく科学的に歴史のぶっ飛んだ部分を書いているところに本当に感動しました。

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井上 そんな皆さんに今日は読んでほしい本を選書し、持ってきました。

・内田樹     …『日本霊性論』
・村上龍           …『龍言飛語』
・カミュ           …『シーシュポスの神話』
・佐々木圭一   …『伝え方が9割』
・よしもとばなな …『キッチン』
・寺山修司    …『ポケットに名言を』
・平田オリザ   …『わかりあえないことから』
・瀧羽麻子    …『うさぎパン』

参加者A:ちょうど読みたかった本がある。エスパーみたい!
井上 小学生の頃から活字をずっと読んでいるし、去年は引き篭もっていたので年間700冊ほど読んでいたので、その読書ストックが活きているのだと思います。

参加者それぞれのおすすめ本

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参加者C 僕も本を持ってきました。といっても、いつも持ち歩いているのですが(笑)
『歎異抄』『歎異抄講話』
何度も読んで、感じ方や考え方が変わっていっていると感じています。読む場所や、誰かと話したあとにふと読むと、捉え方が変わるのです。歎異抄の中には「死は最大の愛の表現だ」という表現があります。私の祖父が亡くなったときに、その言葉を受け心に来るものがあり、そこから仏教を学びたいと考えました。人の死は人に考えるきっかけをくれるものなのです。

参加者B 世阿弥の『風姿花伝』。世阿弥が持っているノウハウを示したのがこの本です。能楽の芸能論書ですが、実は人生論やビジネス書としても楽しめます。岩波文庫や角川ソフィアでも出版されていますが、おすすめはタチバナ教養文庫のもの。世阿弥は貴族の生まれではなく奈良の田舎出身で、もともとは能楽ではなく猿楽をやっていました。しかし奈良だけでは儲からないから京都へ行こうと入洛した。京都には田楽があり、感銘を受けて取り入れたところ、足利義満にスカウトされ、芸能の世界でのし上がっていきました。(義満は同性愛者であり、顔立ちの整った世阿弥を常に横に置いていたとか…)そこで識字能力がつき、本を書き、パフォーマンスの機会を何度も与えられ、成り上がったといわれています。

他にも、ドイツの宗教書が欲しくて買ったが食うお金に困り、栄養失調になるという破天荒な仏教学者・大谷大学名誉教授の松原祐善に関するエピソードが語られ、死についての想いを語り合いました。

参加者C 松原祐善は、80歳のときに体調が悪く病院に検診に行ったら癌だと告知され「そうですか!」とだけ返事して病院を後にしました。癌は転移し、松原の体はボロボロになっていくが、「これは私が健康や命を考えるためにいただいたものですから」と、治療を全くせずに過ごし、亡くなられたとか。すばらしい先生だったと、大谷大学の先生から話を聞き、健康とは、生きるとは何かということを考え、涙が出ました。

お互いを知り、さらに深い選書を

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井上 新年のこの日に、過去~現在を通じて、自分が何に興味があるのかということをペーパーにまとめてください。次回参加の際に、あなたに合う本をプレゼントさせていただきます。

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参加者A 嘘、くだらなさ、ロックの精神とか、いろいろ書いていますが、真面目と不真面目を忘れたくありません。それが自分を保つ要素かと考えています。また、日本絵画・日本的な山岳信仰・日本酒など、自分が日本にいる限りは外せないものが気になっています。そしてエロと詩は、生きる動機です。これがなければ生きていけません。これは不真面目と真面目の間のことだと思っています。

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参加者B 将来的にふるさとの山口県で暮らしたいと考えています。就活って何なんだろうと考えたときに、兄が苦労しているのを見て実感し、ふるさとに帰りたいとひしひしと感じるようになりました。ふるさとのことを何も知らないし、日本人を日本人たらしめることとは何だろうというのが気になっています。あまり先のことを考えすぎると何もできなくなるから、今やりたいことをやろうと思っています。

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参加者C 仏教、料理、茶道、華道などがあげられるが、全てに人が関わっています。自分にとって大切なことは、仏教と人なのではないかと改めて思いました。

井上 みなさんありがとうございます。それぞれの経験や興味から良い選書をしていければと思っています。そこからさらに考えや興味、情報の範囲が広がっていけば。難しい先生の言っていることが理解できたり、新たな出会いがあったり…。それが本の魅力であり可能性です。これから皆さんに届けていきたいと思います! 今日はありがとうございました。

このイベントはお酒を飲み、日常から外れて色々なことを話しながら、明日からまた頑張ろうと思えるような企画です。「日常の喧騒から外れてまったりしたい」「夜にゆったりと語るのが好き」「ひっそりとした隠れ家が好き」「本が好き」少しでも当てはまるあなたなら、ピッタリです、と井上氏。次回また、Deまちでの開催をお知らせしますので、ご期待ください!

 

みやこぶっく

みやこぶっくとは、衣食住「読」というビジョンを掲げ、本と人が”集まる”ことに徹底的にこだわった様々なコンテンツを通じて価値を提供する事業団体です。スマホの普及に伴い様々な余暇の使い方で溢れている現代。読書人口、本の売り上げ等の減少が進む中、本というもの、読書というものが持っている「無限の可能性」を、事業を通して発掘し、本、および本を読むということを「衣食住」の概念に少しでも近づけていきます。

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